はじめに
我々のように逸般の誤家庭のユーザはNTT東西に光工事を頼むことがよくあるのですが、その際に知っておくと便利な概念について記載しておきます。
本記事はおよそ下記の構成になっています。
・光サービスの分類
・工事について ←ボリューム多め
・保守について
・補足
光サービスの種類
一般にNTT東西が提供する光サービスには
・約款サービス(メタルの電話やフレッツ光など)
・相互接続(ダークファイバや義務コロケーション)
・相対取引(一般コロケーション)
という3種類があります。
NTT東西では「一般コロケーション」という呼び方はあまり一般的ではないそうなのですが、監督官庁である総務省はこのように呼んでいます。要はデータセンター的な契約など、義務コロケーションにあてはまらないもののことが一般コロケーションと呼称されています。自治体や準官公庁(大学等)が結ぶことの多い契約形態です。
工事について
このブログが読まれるのはおそらくサービス申し込みとか、工事で詰まった場面等でしょうから、過去の経験を元にその辺について詳しく書いておきます。
サービス総合工事、プロジェクト型工事
基本的にNTT東西発注の工事は、
・「フレッツの開通工事を2万円でやってください」という感じで単価が決まっているサービス総合工事と
・「電柱建ててください。難易度によって料金は変わると思いますけど」という感じで単価が決まっていないプロジェクト型工事
の2種類があります。普通にサービス利用する立場でお世話になるのは前者のサービス総合工事(通称:サ総工)でしょう。
(プロジェクト型工事にも何種類かあるので、かなり大きい括りですみませんが。詳細は後述します。)
サービス総合工事
いま述べたサービス総合工事(よくお世話になるほう)にも種類があります。
・サービスオーダー工事(通称:SO工事)
・配線ルート構築工事
の2パターンです。通常であれば前者のSO工事で施工されるはずです。フレッツやダークファイバの開通でよく見かける工事です。SOについて書き始めると長くなってしまうので詳細は巻末他記事へ譲る事とします。
稀に特殊な工事を頼むと後者のルート構築工事が当たる事があります。そして追加課金(2万円くらい)が発生します。
ルート構築工事が行われる条件は3パターンです。窓口で聞くとどのパターンに該るのかも教えてくれます。
パターン① 区間長5m以上の配線:点検口同士の距離が長すぎて釣り名人とか、ケーブルキャッチャーとかが必要で、時間がかかる工事です。
パターン② 照明器具の取外し:これは電気工事士の資格が必要となり、普通の作業員手当では料金的に割に合わない工事です。
パターン③ 開口部新設:マルチツールやドリルで壁や天井に穴を開けます。壁裏に配管がないと配線の取り回しに時間がかかります。
ルート構築工事は出来る人も少なく納期が更に延長となることが多いです。大体はスケジュールも再度引き直しとなりますので、1~2週間ほど多く見ると良いです。VDSL→光回線に乗り換える工事でルート構築工事にあたる事が多いです。
プロジェクト型工事
書き始めると長くなりますので列挙に留めます。大体3種類くらいです。
・一般計画工事(フレッツのサービス範囲を拡張する等)
・簡易総合工事(同上)
・IRU工事(自治体発注で伝送路=ファイバを新設する。伝送路は自治体の持ち物になる)
などです。普通のユーザには縁遠い工事かもしれません。
工事の区分
最後にサ総工、プロジェクト型工事の両者に共通する話です。工事区分というものがあり、やって来るときの装備が違います。
・アクセス工事(電柱からMDF等の屋内の責任分界点まで):大体高所作業車に乗ってきます
・ユーザ工事(MDF等の責任分界点〜ONUまで):軽バン等の一般車両で来ることが多いです
の2種類です。サービス総合工事は屋内が多いのでユーザ工事が多めですが、稀にMDF内のスプリッターの空きが無い等の事由でアクセス工事を伴う事があります。プロジェクト型工事は屋外の事が多いためアクセス工事の割合が多めです。
自前工事
相互接続の場合
一般にNTT東西発注の工事の一部、相互接続においては「自前工事」なるものが認められています。ファイバくらい自分で引かせろ!という事です。その要件は下記の通りと決まっています。
NTT東日本の相互接続推進部に確認しましたところ、「①建設業法における電気通信工事業の許可を受けており、かつ建設業法における経営事項審査を受け、最新の評点が1,000点以上を有する会社であること。」 or 「②当社又は当社より業務をアウトソーシングしており、現に業務委託している会社であること。」という読み方であるそうです。
この条件ははっきり言ってかなり厳しいです。評点基準は一般のサイト等で広く公開されていますが、弱電工事の場合はNTT東西発注規模の仕事でも受注していない限り、条件を満たすことは相当に難しいでしょう。弱電分野でなければ条件を満たす事業者はそれなりにいると思いますが、「電気通信工事業」とわざわざ書いてありますので相当に僅少な事業者数であると思われます。
約款サービス、相対取引の場合
約款サービス、相対取引の場合は基本的に自前工事は出来ません。約款サービスの場合は3JV(コムシス・ミライト・エクシオ)による直接工事となりますが、相対取引の場合は「NTT東日本ー北海道」のような地域会社の子会社を間に挟んで3JVへ発注する形を取ることが多いです。これが利権というやつです。前者は2~5万円くらいで済みます。後者の場合、恐らく20万円以上はかかります。頑張って交渉しても2~3割くらいしか下がらないです。
「なんでファイバを2m通すだけで20万円もかかるんだよ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが(私もそうでした)、地域会社(NTT東西)というか、大企業というのはそういうところです。仕方ないです。無駄に安全を意識した結果、1人で出来るのに3人でやる、更に下請けを使っているのでそこからまた管理コストがかかります。地域会社本体の利益率は50%を切るくらいかと思われますが、そもそも下請け会社自体もほとんどの役員が地域会社からの出向者なので必ずしも「地域会社の利益率」だけを見て直ちに安価に工事を実施していると判断することは出来ません。この問題は事あるごとにNTT東西側にも、総務省に対しても言っていますが、総務省も規制には後ろ向きなのでここを切り崩すのは相当に難しいとの感触を得ています。
保守について
開通工事があるということは、保守もあります。大体は
・宅内保守(家の中のファイバ + 局舎〜ONUまで光を用いた死活監視)
・アクセス保守(屋外・局舎内のファイバ)
・支障移転(電柱が老朽化してから建て替える工事)
などです。支障移転はプロジェクト型工事の時もあるようです。
なんだかまとまりのない記事になってしまいましたが、知っている事は時々書き足します。
補足:サ総工についての文献
サ総工についてはいくつか詳しい記事もありますのでここに載せておきます。
〇 NTTのサービス総合工事とはどんな工事?|インターネットのお話
〇 サービス総合工事、略してサ総工事とは|today::エンジニアに憧れる非エンジニア