【通信工事】NTT光工事を使い倒すための概略

1.はじめに

我々のように逸般の誤家庭のユーザはNTT東西に光工事(FTTHの開通工事、通建会社の用語では「光」)を頼むことがよくあるのですが、その際に知っておくと便利な概念についてまとめておきます。

本記事はおよそ下記の構成になっています。

目次(手入力)
2.光サービスの分類
3.工事について ←ボリューム多め
4.保守について
5.補足


2.光サービスの種類

一般にNTT東西が提供する光サービスには

約款サービス(メタルの電話やフレッツ光など)
相互接続(ダークファイバや義務コロケーション)
相対取引(一般コロケーション)

という3種類があります。

最後の相対取引について、監督官庁である総務省は「一般コロケーション」と呼んでいますが、NTT東西の正式な呼称ではありません。データセンターやIXなどの様な機能を有したもので、法的義務を伴わないコロケーション役務のことです。自治体や準官公庁(大学等)などが活用している契約形態であり、費用が高いので民間事業者は大抵義務コロケーションを活用します。


3.工事について

このブログが読まれるのはおそらくサービス申し込みとか、工事で詰まった場面等でしょうから、過去の経験を元にその辺について詳しく書いておきます。


(1)サービス総合工事、プロジェクト型工事

基本的にNTT東西発注の工事は、

・「フレッツの開通工事を2万円でやってください」という感じで単価が決まっているサービス総合工事
・「電柱建ててください。難易度によって料金は変わると思いますけど」という感じで単価が決まっていないプロジェクト型工事

の2種類があります。普通にサービス利用する立場でお世話になるのは前者のサービス総合工事(通称:サ総工)でしょう。

(プロジェクト型工事にも何種類かあるので、かなり大きい括りですみませんが。詳細は後述します。)


(2)サービス総合工事

いま述べたサービス総合工事(よくお世話になるほう)にも種類があります。

ア サービスオーダー工事(通称:SO工事
イ 配線ルート構築工事
ウ 付帯工事

の3パターンです。


ア サービスオーダー工事(SO工事)

これが通常パターンです。フレッツやダークファイバの開通工事は大体これです。SOについて書き始めると長くなってしまうので詳細は巻末他記事へ譲る事とします。


イ 配線ルート構築工事

これは特殊な工事の場合に発生します。そして追加課金(2万円くらい)も発生します。ルート構築工事にあたるのは3パターンです。窓口で聞くとどのパターンに該るのかも教えてくれます。

パターン① 区間長5m以上の配線
点検口同士の距離が長いため、釣り名人や
ケーブルキャッチャーが必要となり、時間がかかる工事です。

パターン② 照明器具の取外し
これは電気工事士の資格が必要となり、
普通の作業員手当では割に合わないという工事です。

パターン③ 開口部新設
マルチツールやドリルで壁や天井に穴を開けます。
壁裏に配管がないと配線の取り回しに時間がかかります。

ルート構築工事は出来る人も少ないので、ただでさえ長い工期が更に延長となることが多いです。基本的に通建会社は専門工具を持っていません。スケジュールも大抵再度引き直しとなり、通常のSO工期に加えて1~2週間ほど多く見ると良いでしょう。オフィス(雑居)ビル1階の飲食店において、VDSL→光回線に張り替える工事でルート構築工事に遭遇する確率が高いです(マンションの2階以上の居住区画の場合は、露出配線かつドア間透明ファイバを用いて開口を付けない方法によって行うため、ルート構築工事判定にならない事がほとんどです)。


ウ 付帯工事

これはザックリ言うと「客であるお前が自分で工事しろ」案件です。現地調査→付帯工事→SO工事という順番で光回線の開通手順が進行します。PF配管を入れたり、MDF盤(MDFという木材で出来た板)を取り付けたりします。国有鉄道に付帯した不動産会社や、保険会社などが持っていがちな大型の商業ビルにおいてほぼ必ず発生します。ショッピングモールもそうです。

下の画像の様なPF管(Φ22が多い)をMDF室から引きたいところまで引きます。光ファイバが通れば何でもいいので、呼び線は有っても無くても構いません。

図.PF管

通建会社に頼んでも業者を紹介してくれることはありませんが、この手の商業ビルには大抵出入りの業者さんが居るので管理会社へ頼めばB工事(運が良ければA工事)でやってくれるはずです。しかし大抵は大企業単価で工事料金が積算されてしまうので、殆どの場合は自前でC工事をやる事になります。しかし、さほど難しい工事ではないので気合いでやれば1日くらいで何とかなります。


(3)プロジェクト型工事

書き始めると長くなりますので列挙に留めます。大体3種類くらいです。

一般計画工事(フレッツのサービス範囲を拡張する等)
簡易総合工事(同上)
IRU工事(自治体発注で伝送路=ファイバを新設する。伝送路は自治体の持ち物になる)

などです。普通のユーザには縁遠い工事かもしれません。


(4)工事の区分

最後にサ総工、プロジェクト型工事の両者に共通する話です。工事区分というものがあり、やって来るときの装備が違います。

アクセス工事(電柱からMDF等の屋内の責任分界点まで):大体高所作業車に乗ってきます
ユーザ工事(MDF等の責任分界点〜ONUまで):軽バン等の一般車両で来ることが多いです

の2種類です。サービス総合工事は屋内が多いのでユーザ工事が多めですが、稀にMDF内のスプリッターの空きが無い等の事由でアクセス工事を伴う事があります。プロジェクト型工事は屋外の事が多いためアクセス工事の割合が多めです。


(5)自前工事

ア 相互接続の場合

一般にNTT東西発注の工事の一部、相互接続においては「自前工事」なるものが認められています。すごくザックリ言うと「自分のファイバくらい自分で引かせろ!」が認められる制度になっています。その要件は投稿日(2024年11月1日)時点で、以下の通りに決まっています。

図.自前工事の要件。この条件は自前工事という制度が出来てから一度も変わっていない

NTT東日本の相互接続推進部に確認しましたところ、「①建設業法における電気通信工事業の許可を受けており、かつ建設業法における経営事項審査を受け、最新の評点が1,000点以上を有する会社であること。」 or 「②当社又は当社より業務をアウトソーシングしており、現に業務委託している会社であること。」という読み方であるそうです。

この条件ははっきり言ってかなり厳しいです。評点基準は一般のサイト等で広く公開されていますが、弱電工事の場合はNTT東西発注規模の仕事でも受注していない限り、条件を満たすことは相当に難しいでしょう。弱電分野でなければ条件を満たす事業者はそれなりにいると思いますが、「電気通信工事業」とわざわざ書いてありますので相当に僅少な事業者数であると思われます。


イ 約款サービス、相対取引の場合

約款サービス、相対取引の場合は基本的に自前工事は出来ません約款サービスの場合は3JV(コムシス・ミライト・エクシオ)による直接工事となりますが、相対取引の場合は「NTT東日本ー北海道」のような地域会社の子会社を間に挟んで3JVへ発注する形を取ることが多いです。これが利権というやつです。前者は2~5万円くらいで済みます。後者の場合、恐らく20万円以上はかかります。頑張って交渉しても2~3割くらいしか下がらないです。

「なんでファイバを2m通すだけで20万円もかかるんだよ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが(私もそうでした)、地域会社(NTT東西)というか、大企業というのはそういうところです。仕方ないです。無駄に安全を意識した結果、1人で出来るのに3人でやる、更に下請けを使っているのでそこからまた管理コストがかかります。

地域会社本体の利益率は帳簿上は50%を切るくらいという事になっているはずですが、そもそも下請け会社の役員は地域会社からの出向者です。そのため必ずしも「地域会社の利益率」だけを見て直ちに原価が適正であると判断することは出来ないはずなのであり、更に莫大な研究開発コスト(NTTはいくつも研究所を抱えており、かなり潤沢な予算を割り当てています)が積まれているはずですが、現行約款の料金ではこれらの精査をすることなく、NTTが提出した単価が無条件に積算単価として認められています。この問題は事あるごとにNTT東西にも、総務省に対しても言っていますが、総務省も規制には後ろ向きなのでここを切り崩すのは相当に難しいです。なぜなら、こうした言い分を認めてしまうと、電力会社や道路公団など他の公益企業にも飛び火して「遊休地を活用しなさい」「保養所は売りなさい」「天下りはやめなさい」などという面倒な話になり兼ねないためです。自分が役人なら消費者として許せる範囲の料金まではこういう難しい話は見なかったことにするかもしれません。

ではどうすればいいかというと、NTTを再度国営化するか、あるいは自前工事の基準を緩和して電気通信事業法の適用対象をIXやDCなどのコロケーション事業者にも広げ、これらにも廉価かつ差別のない方法による提供義務を課せば良いはずなのですが、日本のコロケーション事業は垂直統合型のビジネスモデルなので後者は大手電機通信事業者が黙ってはいないでしょう。前者は一度決まったことなので覆すのは難しく、後者で行くとするならば安全保障などを理由にして海外の電気通信事業者への規制という大義名分でこれを押し通すしかありません。いずれにしても我々の手には余る話なので、とりあえず総務省に要望書だけは出しました。


4.保守について

開通工事があるということは、保守や撤去工事(殆ど使わない)もあります。保守のほとんどは

宅内保守(家の中のファイバ + 局舎〜ONUまで光を用いた死活監視)
アクセス保守(屋外・局舎内のファイバ)
支障移転(電柱が老朽化してから建て替える工事)

などです。支障移転はプロジェクト型工事の時もあるようです。

なんだかまとまりのない記事になってしまいましたが、知っている事は時々書き足します。


5.補足:サ総工についての文献

サ総工についてはいくつか詳しい記事もありますのでここに載せておきます。

NTTのサービス総合工事とはどんな工事?|インターネットのお話(自前工事の記載内容に一部誤りがあります)
サービス総合工事、略してサ総工事とは|today::エンジニアに憧れる非エンジニア

作成者: rarafy

2013年くらいからUnityを触っているかもしれません。 特に書くこともありませんが、趣味は部屋の掃除です。

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