警光灯を取り付け、パトロールカーを自作する(緊急自動車)

背景

道路交通法施行令第13条に緊急自動車について書かれています。自分も緊急自動車を使用できそうでしたので、これを自作する事としました。

道路交通法施行令第13条の一部


重要な注意点

当記事の内容の実施にあたって、必要な許認可等は全て取得することを前提とします。

当記事の内容も適法に実施されています

また、所轄の警察署や官公庁(軽自動車検査協会や国土交通省)ともよく話し合って適法に手続を進めて頂きますようお願い致します。

なお本記事は普通自動車を購入してきてから緊急自動車へ改造し、これに公道を走行させるまでの大まかな流れと、自動車の改造(合法)を技術的な側面から扱ったものでありますから、違法な行為を助長する目的は一切御座いません。よろしくお願いいたします。


手順1.基準等の確認

まずは所轄の警察署に電話を掛けて手続を確認します。緊急自動車については都道府県警察から通達のようなものが出ています。しかし、通達はA4用紙4~6枚ほどしかなく、そもそも主語が「警察署長は」となっていることから、我々ユーザ向けの文書ではないことが分かります。

緊急自動車の届出の通達(都道府県警察)

よって電話で都道府県警察の本部に手続を確認する必要があります。警察本部なら交通企画課、警察署なら交通1課の企画室、そんな感じの名前の所です。電話でご説明頂いたところによると

手続は次によって行います。

① 書類を警察署へ提出し、「受付証明」を取得する
② 陸運局、または軽自動車検査協会で構造変更検査を受検する
③ 検査に合格したら、新しい車検証を持って写真を警察署へ提出する

最初の①の段階では、次の書類を用意して管轄の警察署に持参してください。

・届出の申請書(都道府県警察HPに様式あり)
・車検証の写し(改造前)
・車両の写真(改造前)
・資格を満たすことの疎明

※構造変更検査の合格後の申請で、合格後の車検証の写しと車両の写真の両方を再度持参

ちなみに貴殿らの管区において民間企業で同種の手続は先例がありません。(北海道警察本部 交通企画課)

との事です。そんな気はしてましたが、やっぱり前例ないんですね。

申請様式については都道府県警察のHPより入手する事が出来、適当に記入して持っていけば良いようです。

届出様式

基本は書いてある通りに枠を埋めます。

用途:これは道路交通法施行令第13条を参考に、「電気事業(公益事業)において、危険防止のために使用する」のように書きます。
住所及び氏名:住所と氏名の両方を書きます。
車名及び型式:「ホンダ JB6」みたいな感じです。
自動車登録番号又は車両番号車台番号を記載します。ナンバープレートの番号を記入してしまうと、構造変更検査受検時に番号が変わるので申請書類を差し替える手間が発生します。

最後に警察署で「備考」欄に警光灯を何個付けるか、サイレンを何個付けるかを、担当の警察官と相談しながら手書きで書き加えて届出ます。

提出後、大体1週間くらい待つと、受付済証が出来上がります。

受付済証


補足1:車両について

手元にホンダのライフがありましたので、これを改造対象の自動車とする事にしました。

ホンダ ライフ JB6

本当は積載量の関係から、三菱のGBD-U62V(高さ189cm)という軽バンを改造したかったのですが、軽自動車検査協会に確認致しました所、

軽自動車の構造要件の都合上、高さが200 cmを超えるものは普通自動車となり、陸運局の管轄となります。(軽自動車検査協会 札幌主管事務所)

と言われてしまいました。警光灯は薄く見えますが、実際には25 cm程度の高さがあります。よって何も考えずに取付けを行うと軽自動車の構造要件である200 cmの高さを超過する事になります。

散光式警光灯とはこういうものです

(安全性能が) 軽自動車である車両を、登録自動車として陸運検査協会へ持ち込むという行為は明らかにメーカーが想定した使い方ではありません。

普通に考えて警光灯をボルトで付けたくらいなら、スパナを用いれば容易に着脱出来ますから、構造物とは見做せず構造上の高さの変更にも該らず、軽自動車のままでも良さそうなものですが、国土交通省の役人さんに確認しましたところ

緊急自動車の要件として「保安基準第49条の規定に適合する警光灯及びサイレンを有すること」と通達にありますから、警光灯も構造物と見做します。よって、ご指摘の自動車は登録自動車となります(国土交通省 物流・自動車局 総務課)

と仰っていました。ルールの理由を尋ねているのに「そういうルールだから、これを守らなければならない」と循環論法です。釈然としません。違う課に確認致しましたところ詳しい説明を得ました。

そもそも自動車の構造変更検査が必要となるのは、自動車検査証記録事項の「用途」の欄が「特種」へ変更になるからであって、警光灯を取り付けて高さが変わったからではありません。

構造変更検査の実務の面においては、警光灯に限らずスキーキャリア等のオプション品も含めて自動車に取り付いているものすべてが検査・計測の対象となります。このとき、結果的に自動車の高さが変更されるというのが正しい考え方です。

ただし、2年ごとに行われる定期車検においては、通達(自技234号自技235号)にもあるように警光灯等の指定部品(自技235号:その他の部品ー規定灯火器類に該当)であれば、構造変更検査を命ずる対象とはならず、車両の規格が変更されたとは考えません。

構造変更検査では前述のとおり、該当車両のサイズを高さを含めて全て測り直します。この時検査時に付属しているオプション品(警光灯やスキーキャリア等)も全て含めて測りなおします。例えば仮に構造変更検査の合格後に破損等の事由で警光灯を交換した場合、このときは指定部品の交換に該りますからそのまま定期車検を受検しても構わず、このとき警光灯の交換を理由に不合格となる事はありません。
(国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課)

との事です。納得しました。

自動車ユーザーは定期車検を受ける義務がありますが、ここで緊急自動車で受験するにもかかわらず、車検証の「用途」の欄が「特種」でない車両を持ち込んだ場合は構造変更検査を命ぜられます。法令上(道路運送車両法67条で)は、構造変更検査の対象となる改造を行った日から起算して15日以内に検査を受検する必要があるという事になっていますので、これが構造変更検査を受検する根拠です。

もちろん道路運送車両法に基づいて、国土交通大臣により構造変更検査の受検を命ぜられたい人は構造変更検査を受検することなく、先に定期車検レーンに並んでも法令上全く問題はありません。そんな物好きはいないと思いますが。

そしてこれはおそらく本記事が初めて明らかにした事実なのですが、実は構造変更検査では変更の原因となる部品以外(例:スキーキャリアやバンパー)を取り付けたまま受検しても、そのことを理由に不合格とはならないのです。多くのオプション品は簡易的/固定的(警光灯は固定的/恒久的)な取付をした状態で構造変更検査を受検できるそうです。具体的なオプション品の例には

・簡易 or 固定的に取り付けた指定部品:ルーフキャリア、スキーキャリア
・固定 or 恒久的に取り付けた指定部品:警光灯
・簡易的取付した指定外部品:バンパー

などが挙げられます。ただし、税金面を中心とした不利益を被る場合がありますので、普通はわざわざスキーキャリアを取り付けた状態で構造変更検査に臨む物好きなユーザーはいないと思います。

バンパーを簡易的取付にすべきかは議論を呼んでいるところでしたが、検査側が整備の実態に合わせてバンパーは簡易的取付でもよいという扱いで統一しているようです。現行の道路運送車両法関連法は改正間もないので、こうした不具合も時々出てくるようです。


補足2:警光灯を載せた自動車が公道を走行することは適法か

ここで、通常の車検証はあるが、警光灯を載せる改造を施し、今からまさに構造変更検査を受けようとするために「特種」用途の車検証はない自動車が公道を走行することは適法か考えます。我々事業者側も国土交通省と調整中なのに不正改造車両である、などとして急に検挙されて前科が付いては困ります。


道路交通法(警察庁所管)

まずは警察の所管する道路交通法を見てみます。道路交通法施行令第14条を読むと、

(緊急自動車の要件)
第十四条 前条第一項に規定する自動車は、緊急の用務のため運転するときは、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定(道路運送車両法の規定が適用されない自衛隊用自動車については、自衛隊法第百十四条第二項の規定による防衛大臣の定め。以下「車両の保安基準に関する規定」という。)により設けられるサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない。ただし、警察用自動車が法第二十二条の規定に違反する車両又は路面電車(以下「車両等」という。)を取り締まる場合において、特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない。【道路交通法施行令】

道路交通法施行令第14条

とあります。そもそも緊急自動車が緊急の用務のために走行するときにはサイレンと警光灯を「つけなければならない」と書かれています。ほかの車両がサイレンや警光灯を「つけてはならない」とは書かれていませんから、緊急自動車であるかどうかに関わらず、警光灯やサイレンを点けて走行しても道路交通法に違反する状態とはなりません


道路運送車両法(国土交通省の所管)

次に国土交通省の所管する道路運送車両法を見てみます。国土交通省の通達(自技234号)によれば、指定部品である散光式警光灯(自技235号:その他の部品ー規定灯火器類に該当)を備える自動車は緊急自動車です。ここで「警光灯を備える」というのはどのような取付方法であれ、走行時に安全と考えられる方法(=ボルトとナットを用いた固定的取付が一般には推奨されるで警光灯が車体に付いてさえいれば保安基準上は良いようです(※国土交通省の自動車整備課に電話で確認済)。

ボルトやナットで取りついていないからといって、これを理由として直ちに保安基準に不適合となることはありません。というか現地の検査官はそんなニッチなところまでは知らなさそうでしたし、確認も受けませんでした。

道路運送車両の保安基準49条を見ると

第49条 緊急自動車には、当該自動車が緊急自動車であることを他の交通に示すことができるものとして、警光灯の色、明るさ、サイレンの音量に関し告示で定める基準に適合する警光灯及びサイレンを備えなければならない。
2 緊急自動車は、当該自動車が緊急自動車であることを他の交通に示すことができるものとして、車体の塗色に関し告示で定める基準に適合しなければならない。【道路運送車両の保安基準】

道路運送車両の保安基準 第49条

とあります。ここでは具体的装備として
・よく目立つ警光灯、そしてサイレン
・すぐ分かる車体色
を具備する必要があるとされています。

なお、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示の75、153、231条によると、消防車以外の車両はほとんど何色でもよい事になっていますので、実質的な要件は前者のみであり、我々が運転する車両自体は道路運送車両法の保安基準を満たして適法であることがわかります。

さらに、構造変更検査を受けるべき時期について道路運送車両法第67条を見ると

(自動車検査証記録事項の変更及び構造等変更検査)
第六十七条 自動車の使用者は、自動車検査証記録事項について変更があつたときは、その事由があつた日から十五日以内に、当該変更について、国土交通大臣が行う自動車検査証の変更記録を受けなければならない。ただし、その効力を失つている自動車検査証については、これに変更記録を受けるべき時期は、当該自動車を使用しようとする時とすることができる。【道路運送車両法】

道路運送車両法 第67条

とあります。自動車検査証記録事項の「用途」の欄が「特種」になるという「変更があつた」わけなので、15日以内に検査を受けて合格しさえするならば、検査前に公道を走行するケースは道路運送車両法にも適合します。よって構造変更検査に合格するまでの期間は赤色灯が付いたまま公道を走行してよいと解釈できます(そして道路交通法の解釈によって、赤色灯やサイレンを点灯させて公道を走行してもよい)。


だが、15日以内に検査に合格する事は難しいのではないか?

構造変更検査では、レーンや整備員の空き状況との兼ね合いもありますから、実際には1~2週間以上先の予約しか取る事が出来ません。特に軽自動車検査協会の予約は陸運局よりも取りづらいです。待ち時間が半分以上の時間を占める状態で、15日以内に検査に合格しなければ処分を受ける可能性があるというのは不合理です。

軽自動車検査協会へ確認したところ「お客様のように事情があるのであれば、内部で調整致します」との事でした。

国土交通省にも確認してみたところ

予約に時間がかかるというご意見については確かに承りました。

しかしながら、検査レーンや人員等との兼ね合いから直ちに予約不要とすることは難しく、15日という基準を動かすことも公の利益を損なってしまうと考えられます。法の趣旨としては危険な自動車(例えば大幅に重量超過している自動車)が公道を走行し続けると道路の損耗や重大な事故を招きかねないため「15日」という制限を設けております。

お客様のように警光灯だけを取り付けた場合には、たしかに15日という基準は適切ではないと考えられますが、構造変更検査を実際に命ぜられている車両の多くは重量や大きさを超過しているなど、公道走行にあたって危険な状態が大半であるため、すべての自動車に対して15日という基準にしておくことが安全な車両等の走行において現状の最適解であると考えています。

なお本件のように緊急自動車になろうとしている自動車を、16日目以降、直ちに捕まえて罰するという事は事情も斟酌して通常はしないと思います。実際に取締を行う警察の見解は、警察署へ確認頂きたく存じますが、おそらく同じような考え方ではないかと考えます。

事情につきましては検査協会へお伝え頂き、速やかな検査に協力してもらうようご依頼ください。
(国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課)

との事です。なんと予約サイトの表示やキャンセル待ちとは関係なく、どうしても斟酌すべき事情があれば、検査の予約待ち時間そのものも縮められる場合があるようです。

上記の議論をまとめますと、警光灯を取り付けてから15日の間公道を走行する事は合法16日目以降は違法であるが事情も斟酌して杓子定規に直ちに罰する事はないとのことです。

自分で言いだしておいて何ですが、実際にはこんなニッチな事例の取り締まりはしていないのではないかと思います。可罰的違法性に欠けますし、謙抑主義の観点から行政罰を課されることはほぼ皆無と考えてよいと思われます。ちなみに、覆面パトカーを装った車両が指導を受けずに公道を走行出来ていた事例が過去にあります。この事例でも当該車両が改造から事故発生まで公安委員会や国土交通省から一切の指導を受けていないものと思われます。


取り締まりをする部署の話

覆面パトカーを装った車両を指導できない理由は他にもあります。それは官公庁の縦割り行政です。警察の同じ交通課でも、交通指導を行う部署緊急自動車の所管部署では名称が異なります。前者は大体どの警察署でも「指導係」などの名称である一方、緊急自動車を所管するのは「企画係」です。そして窓口で車庫証明とか道路使用許可をやっているのが「規制係」などの部署であり、これらはすべて異なる部署なのです。

例えば札幌方面北警察署の場合には「交通第一課」という部署にこれらの係が収まっていますが、外勤の指導係と、内勤の企画係や規制係等の間で完璧な連携が取れているのかは必ずしも明らかではありません。ちなみに交通第二課というのは事故が起きたときに呼ばれて現地で対応する方々です。さらに北海道警察など県警本部等の扱いになると「交通企画課」「交通指導課」など、方面警察署と同じことをやっていても「課」へ位が上がって扱われるようです。


補足3:道路運送車両法の歴史

道路運送車両法や道路交通法というのは、結構長い歴史を持つ法律です。道路運送車両法に限っては、鉄道省が1931年に作った自動車交通事業法を作り、1947年に旧道路運送車両法へと形態が変更され、1951年に運輸省が不備欠陥を正して現在の形態となり、2001年に国土交通省に所管が移ったという実に100年近くの歴史を持っています。

1931年というのは、まだ国鉄があった時代です


2.架装

ルール確認が終わりましたので、いよいよ取付です。逆さでも斜めに取り付けても良いんでしょうか。


補足4:警光灯は逆さや斜めに付けてもよいのか

国土交通省へ確認致しましたところ、

取付位置は縦でも横でも斜めでもなんでも構いませんが、構造要件は必ず満たしてください。
(国土交通省 物流・自動車局 総務課)

警光灯は構造基準を守れば斜めに取り付けても良い

という事で斜めでも良いそうです。確かに救急車はおでこのあたりに道路に対して斜めに付いていますね。

ちなみに街でよく見る「パトカー」「救急車」はそれぞれ「パトカー」「救急車」として最初から型式登録を受けており、一般車両を改造しているわけではないので工法の参考にはできませんでした。


取付

いよいよ工事(自動車業界では「架装」というらしい)の本編です。散光式警光灯を付けて構造変更検査を通せば良いという事が分かりましたから、実際に選んだ車両へ警光灯を取り付けます。

自在取付式の警光灯でしたので、天井内張を剥がしてから、屋根に5か所(ボルト用4か所+配線用1箇所)穴を開けて架装しました。

多分取付けで一番難しいのは穴あけ、次は電気(バッテリー→アンプ→警光灯)です。何も目印が無い状態から左右均等に穴を開けるというのが特に難しいです。電気は作業箇所が多くて面倒です。機種が古く紙のマニュアルしかない上に、マニュアルごとに書いてあることが違うので、アンプ⇔警光灯の配線だけで4時間くらいかかりました。

警光灯を取り付けた

地面に対して斜めに取り付けたら高さが抑えられるので良いんじゃないかと思ったのですが、

・フロントピラー側のみならず、センターピラーを挟んだ後ろ側の天井内張も全部剥がす必要が出てくる
・警光灯のもとがでかすぎて、実は大して高さを抑えられない

という理由で真っすぐに取付けました。

ボンネットの開け方が分からなかったので、船舶整備屋さんを引退された方に頼み込んで施工を指南して頂きました。マニュアルはもらいました。皆様ありがとうございました。

多分、最初にやる人はマニュアルがないと組立てるのは絶対に無理だと思います。新しい機種だったらネットで同一メーカの他機種マニュアルを参考に何とか出来るかもしれませんが、古い機種だと機種ごとに異なる配線の色を正しく当てられるか分からないという重大な問題があります。


手順3.構造変更検査

改造が完了したらネットで予約をして、軽自動車検査協会というところに行きます。

先に受付で書類を記入しておきます。ホームページには色々書いてありますが、持ち物は「現金」「公安委員会の許可証」だけで良いです。他の物は全部現地で調達出来ます

10分くらい待機し、それから係員の指示に従ってレーンを走ります。他の一般車両は20分くらいで検査を終えていました。特殊車両の我々は1時間くらい長さを測ったり棚の検査などをしました。

検査員の方も緊急自動車の検査は初めてらしいです。また、検査官が何人か野次馬していました。

今回の検査では改造箇所と関係ないライト(前照灯)輝度とサイドスリップに問題があったため、再検査となりました。皆さんも受検前にテスター屋さんで光軸の調整は必ずやりましょう


補足5:応急作業車の構造要件

そのほかに現地で解釈が分かれたポイントとしては「応急作業車の構造要件」というものがあります。

ここは陸運検査協会や、軽自動車検査協会ごとに必ず揉めるポイントかと思いますので、電話等で事前に確認しておくことを勧めます。

特殊自動車については国土交通省の通達で「作業に必要な資機材を収納する設備を有すること」と決まっています。下の図は公共応急作業車の例です。

図は公共応急作業車の例

軽自動車検査協会側の言い分はこうです。

「作業に必要な資機材を収納する設備」というのは、例えば棚や工具箱のことだ。特殊自動車とは、特殊な作業ができるからこれに分類されるのだ。これではただの乗用車に警光灯を載せただけではないか。(軽自動車検査協会 札幌主管事務所)

まあ検査官がそう言っている以上はその場ではそうなのでしょう。後日棚は別個に固定的方法で取り付けるという事で決着して持ち帰る事にしたものの、ぼくは夜になってもどうしても納得できません。翌朝、軽自動車検査協会へ電話を掛けて再度「工具を収納する設備」の定義について再確認してみたものの、「現地で見ないと分からない」とやはり整然とした回答は返ってきません。

「工具を収納する設備」の定義がはっきりしないので改造も出来ず困ってしまいました。道路運送車両法の第一条の目的の条項には

この法律は、道路運送車両に関し、所有権についての公証等を行い、並びに安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全並びに整備についての技術の向上を図り、併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより、公共の福祉を増進することを目的とする。(道路運送車両法第1条)

とありますが、構造変更検査の基準が分からず自動車整備が出来ないという状態というのは法令本来の目的である「自動車の整備事業の健全な発達に資」してはいないと思われます。

行政法の解釈は作った人に聞くしかありません。国土交通省が「工具を収納する設備」とは何だと思っているのか確認致しましたところ

ご指摘のように自動車の荷室であってもそこに工具が収まるのであれば、それは工具を搭載するために必要な設備と言えます。極端な例ですが、2人乗りのスポーツカーを緊急自動車としたいのであれば、それは「うーん」となりますが、普通の乗用車であれば良いのではないでしょうか。

後で軽自動車検査協会の本部にも確認してみます。
(国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課)

との事でした。後から最寄りの軽自動車検査協会から電話が掛かってきて、棚は付けなくて良い事になりました。

このような解釈の違いが発生する理由の一つは、特殊自動車の要件が過去に厳しく変更されることがあったためです。8ナンバー車(特殊自動車)は税金が安いため、車内に適当な机を置いて「特殊構造だ!」と言い張る人がかなりいたことから、特殊車両の審査基準が厳格化されたという歴史的背景があるそうです。


唐突の廃車

先にサイドスリップが合格しなかったという話をしました。どうも事故車(修復歴あり)を購入して改造したものの、完全には直りきっておらず、フレームが歪んでいるようでしたので廃車が決まりました。

詳しい理由を備忘のため下記に書いておきます。

1.フロントバンパー・フロントパネルが押されて微妙に凹んでおり、それに伴って色々な部品が圧迫

2.また下回りの錆が素人目にもひどく、スタビライザーが剥がれており、溶接困難

3.上記すべてを修理すると30万円は最低でもかかるが、そうするとライフの中古車が3台は買える。よって廃車(正確にはモータースポーツが好きな知人に譲渡)

皆さんが自動車を買うときはまずは下回りに錆がないか確認しましょう。錆は多かれ少なかれどんな自動車にもありますが、溶接できないほどひどい自動車は避けた方がよいです。

そして懲りずに中古車をもう1台買ってきました。こんなのです。

ハイエースを買ってきた

先の改造で、自動車が小さいと配線は簡単だが車両そのものが壊れやすいのと、積載量が少ないというのを学びましたので、こちらを改造対象の車両としました。

軽自動車はやはり長距離走ると疲れます。主な理由はエンジンとブレーキのパワー不足です。爆音を立てる割にあんまり進まず、良く曲がるけどブレーキパッドが小さくて全然止まれません。

警光灯は先ほどのライフと同様に適当に取付けしておきました。


再検査

今度は運輸支局というところに予約のうえ持って行き、無事検査を終えました。検査に受かったのが下記の状態です。

ちなみに検査の2週間前くらいに手続しておけば希望ナンバーを選択できます。特殊自動車で希望ナンバーを選ぶ人は少ないようですが。

自動車の種別は「小型」から「普通」へ変わりました。警光灯を取り付けたためです。用途は「貨物」から「特種」へ変わり、また車体の形状も「バン」から「公共応急作業車」へ変更されています。


手順4.再び警察署へ届出

この状態で警察署へ届出をします。4方向からの画像を印刷し、合格後の車検証の写しと併せて警察署へ提出します。

そして2週間ほどして、緊急自動車の指定証なるものが手渡されます。これを自動車に備え付けて完了です。


補足6:赤色灯だけを回し、またはサイレンだけを鳴らしながら走行する法的根拠は何か。

まれにNEXCOが管理する高速道路や、警察車両で速度取り締まり中でないのに赤色灯だけを回して走行している自動車を目にします。公的機関がやっているという事はルールで認められているという事だと思いますが、これにはどのような法的根拠があるのでしょうか。都道府県警察本部へ確認を取りました。

認定を受けた自動車が、回転灯だけを回し、またはサイレンだけを鳴らしながら走行するという行為は法令で制限されていない行為ですので、罰則はありません。また、回転灯だけを点けて走行していたからといって、現場で警察官が指導をするといったこともありません。

そもそも道路交通法では「緊急走行する自動車は赤色灯とサイレンを付けなければならない」と定めており、いずれか一方またはどちらも付けていないものは速度違反の取り締まりをするパトカーを除いては一般走行という区分となります。これ以上の規定はないため、道路運送車両法に適合したパトカー等が赤色灯のみを点けて走行した場合に法令上直ちに問題とはなりません。

しかし、赤色灯だけを付けて走行すると、聾唖者の方々から「緊急走行と誤認する恐れもある」と警察自身も苦情を頂戴しております。趣旨をご理解頂き、事業者様におかれましても緊急でない走行は控えて頂く方が好ましいと言えます。

警察やNEXCO等の特殊法人においても警察からの要請によって赤色灯だけを回して警邏業務にあたっている事がありますが、これは安全運転を啓発するためでございます。

前述のように緊急走行と誤認しやすいという問題もありますので、警察でも新型警光灯の導入を進めています。(北海道警察本部 交通企画課)

警察といえど色々あるのですね。ルール上は回転灯だけ回して走っても罰則はなく、民間事業者が警邏業務のために回転灯だけを点けて走行または駐車する事も必要に応じて認められるとの事で理解しました。

緊急時にそんな悠長な議論はしていられませんから、何でも事前に確認する事は大事だと思います。結論、法的根拠はありませんでした(罰則はないので現状の運用方法は各事業者に委ねられている状況)。


補足7:駐車禁止の免除

警察署のwebサイトにも載っていますが、指定を受けて標章を掲出すれば駐車禁止場所の標識がある場所に限って自動車を駐車する事が認められます。

紛らわしいのですが、「駐車禁止の免除」が認められるのは駐車禁止場所だけなので、駐車禁止場所には駐車する事は出来ません。

駐車禁止と駐停車禁止は紛らわしい

緊急自動車が理論上受けられる特権は下記の2種に大別されます。

・優先通行権(俗にいう緊急走行で、対向車線へはみ出したり赤信号時に安全確認の上で徐行しながら交差点へ進入できる)
・駐車禁止の免除(標章を掲出することで、駐車違反切符を切られない)

駐車禁止の免除というのは非常に強い特権ですが、緊急自動車はとにかく目立つのであまり変なことは出来ません。ちょっと目立つとかそういうレベルではないので、運転には細心の注意を要しそうです。


おまけ:はたらくクルマ

街で見かける営業車両というのは、大体下記の3車両に収斂するらしいです。

1.ハイエース
2.プロボックス
3.ハイゼットカーゴ

荷物をたくさん積めれば積めるほど良い。シンプルにして分かりやすい考えが面白いですね。

作成者: rarafy

2013年くらいからUnityを触っているかもしれません。 特に書くこともありませんが、趣味は部屋の掃除です。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です