概要
2020年、AMDがIntelのCPU性能を超えたと主張。CPU市場が盛り上がりました。
☆本記事に書かれている内容ーーーー
・メーカの選択(Intel,AMD)
・Intel(Xeon)
・AMD(EPYC, Ryzen ThreadRipper)
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メーカの選択
CPUメーカは昔は色々ありましたが、2021年時点ではIntelかAMDから選択するのが主流となっています。
最新のRyzen ThreadRipperとCore i9で迷っているのであればAMDを、2020年以前に発売されたCPUであればIntelを選択すれば間違いないです。
AMDのCPUはこれまで、「Intelより安く低性能」と言われていましたが、2020年にThreadRipperの登場で形勢が変わりました。用途によっては、AMDのRyzen ThreadRipperの方が安価で高性能になりました。
また、AMDとIntelでは、CPUの構造や呼び方も含めて細かいところが違います。AMD独自の呼称としては、「コア(Intel)→モジュール(AMD)」「スレッド→コア」「ターボブースト→ターボコア」等があります。
~技術的な詳しい話~
AMDはCPU生産をTSMC(Intel・サムスンと並ぶチップ製造3大手の一つ)に委託しており、2021年4月時点で最も優れた7nmのプロセスルールでCPUを生産できます。これに対し、IntelのCPUのプロセスルールは14nmです。
プロセスルールが半分ということは、同じ面積に4倍のトランジスタを詰め込めることになり、勿論性能も向上します。さらに、トランジスタのサイズが小さくなればなるほど、トランジスタを動かすのに必要な電力が減るため、消費電力が低下します。
CPUは半導体です。シリコンウエハーの機嫌次第で、同じように作ったつもりでも、なぜか上手く動くものと動かないものがあります。普段このような不良品は検査の段階で弾かれます。
半導体製造では、図5に示すように、半導体の面積が大きいほど、製造失敗率が上がります(=歩留まり率が下がります)。従って、プロセスルールが小さい方が、失敗率が下がり、製造コストが安くなります。
このように、性能向上・低電力・製造コスト低下とメリットしかないため、プロセスルールは小さければ小さいほど良いのです。(※プロセスルールは集約度合い目安を表す数字であって、製造時のピッチ数と同じではありません。単純に4倍の性能差がある訳ではないです。)
2021年時点のIntelは、この点で差を付けられているわけです。
しかし、IntelのCPUが今後使われなくなる訳ではありません。例えば、Xeonは8CPU対応、最大メモリサイズ4.5TBなど、優れた点も多いです。誤家庭もしくは業務で使う場合、こちらを選択するケースも十分にあると思います。
IntelのCPU
IntelのCPUは全部で5種類あります。より大雑把には2系統です。
サーバ用のXeonと、民生用のAtom,Celeron,Pentium,Coreです。
前者はゲームに向きません。後者はパフォーマンス不足・消費電力過多のため、サーバー用途には向きません。
もっと詳しくまとめたのが表1です。
表1.Intel CPU一覧
プロセッサ名 | 用途 |
---|---|
Atom | 「組み込み用のプロセッサ」。タブレット端末など。 小型/省電力/超廉価。Celeronより遥かに低性能です。 |
Celeron | 「最も低価格のブランド」。 スティックPC・エントリーモデルに多いです。 |
Pentium | 「次に低価格帯のブランド」。 かつてはIntel CPUの中核を担うブランドでした。 |
Core | 現在最も多くのPCで使われています。ラインアップに |
Xeon | サーバー用。並列処理の性能が非常に優れています。 Intelの最新技術です。省電力・高耐久。 |
民生向けに関しては、Atom<<Celeron<Pentium<Coreシリーズの順で高性能になっていきます。
さらに、CPUの中にはGPUが無くても画面を出力できる機能(Intel HD Graphics)を付けたモデルがあります。家電量販店で売っているミドルクラスまでのパソコンの多くがこれです。自作er向けのCPUにこの機能は付いていません。
XeonとCoreシリーズ
Xeonシリーズは、ここまでの民生用とは違い、過酷な環境での使用が想定されています。信頼性が高くて並列処理に向いています。最新の技術も投入されていますが、値段は高いです。
・値段が高い
信頼性が求められ(=交換費用がかさむ)、製造数が少ないほか、研究開発のコストが加算されているためです。
・技術が進んでいる
Coreシリーズと比べ、概ね2~3年程度の技術の開きがあると言われています。
サーバ用のCPUは、低電力・高性能でなくてはなりません。ゲーム用コンピュータには、高電力・高性能が求められます。すると、必然的にXeon側の技術開発を優先する必要がある、となるのだと思います。
・高機能
Xeonならサーバ向けの追加機能が使えます。「ECCメモリ対応」「マルチソケット」の2つが有名です。
「ECCメモリ」というのは、図1の一番上のようにチップが1枚多く付いているメモリです。エラーを自動で訂正してくれます。
結果、24時間365日連続で稼働し続けても、システムがクラッシュしにくいです(=ブルースクリーンが出にくい)。
「マルチソケット」というのは、CPUを2つ以上積む技術です(図2)。
1つのプロセッサ(CPU)で使える拡張カードの数(=PCIレーン数)は決まっています。しかし、対応のマザーボードに2個以上のCPUを積むことで、この制限を緩和できます。例えば、Xeon Silverの場合、図4に示すようにレーン数は48です。つまり、GPUを3枚最高性能で動かせるわけです。
例えば、マイニング用途の場合、Xeon Silver 4116を4枚積めば、GPUは単純計算で192枚積めるようになります(実際にはSSD等のI/Oデバイスにもレーンを振り分けるのでもっと少なく、ライザーカードと大容量の電源も必要です)。
メモリも同様に、768GB→3TBまで積めるようになります。
・並列処理性能が高い
CoreシリーズとXeonの最大の違いです。
表3は各CPUのコア数です。
表3.各CPUのコア・スレッド数
プロセッサ | 最大コア数 | 最大スレッド数 | 例 |
---|---|---|---|
Ryzen 9 | 16 | 32 | Ryzen 9 3950X |
Ryzen Threadripper | 64 | 128 | Ryzen Threadripper 3990X |
EPYC | 64 | 128 | AMD EPYC 7002 |
Core i7 | 10 | 20 | Core i7 10700K |
Core i9 | 18 | 36 | Core i9 10980XE |
Xeon Silver | 16 | 32 | Xeon Silver 4216 |
Xeon Gold | 24 | 48 | Xeon Gold 6348H |
Xeon Platinum | 28 | 56 | Xeon Platinum 8380H |
コア数が増加するほど1コアあたりのクロック周波数が低下します。ゲームなど、1つのアプリケーションで、単一のディスクへ一時的に大容量データを書き込む場合には向きません。
もっと業務的な(同じ処理を延々と大量に捌きたい)ケースの場合はCoreシリーズより高い性能が得られます。
※拡張機能
Xeonの方が多くの拡張機能が用意されています。深くは触れませんが、vPro,SMX,RAS,NTB等に対応しています。
※内部キャッシュ
また、Xeonプロセッサの内部メモリ(L1~L3キャッシュ)の容量は普通のCPUより大きいです。
さらに内部メモリはECCメモリとなっています。AMD Athlon, Opteronも同様です。
AMDのCPU
AMDの場合、基本的に用途別に名前を付けているため、Intelとは異なり、同じブランド内での型番の比較をすることになります。
下の表4の種類があります。
表4.AMDのCPU一覧
プロセッサ名 | 用途 |
---|---|
Sempron | Intelの「Celeron」に対応。安いです。 |
Athlon/Turion | Intelの「Pentium」の対抗馬。次くらいに安いです。 |
Fusion | CPUにGPUの機能を付けたもの(APU)です。主に家電量販店で売っているPCで使われます。 IntelだとCoreシリーズに含まれます。 このAPUの技術に関してははAMDの方が優れていると言われています。 |
Ryzen(FX/Zen) | ほとんどのパソコンがここに該当します。 なお、Ryzenは、FXシリーズの後継のZenシリーズの一種です。 |
Opteron/EPYC | サーバ用。 |
先ほどと同様に、おおよそSempron<Turion<Fusion<Ryzenの順番で計算能力が高くなって行くと考えて問題ないと思います。
CPUによって、命名規則が異なるため、単純に数字が大きいほどすごいという訳ではありません。(詳しくは触れません)
おまけ
最新のRyzen Threadripper 3990Xは64コア128スレッドです。同時にTDPが高い分、サーバ用のEPYCよりも周波数が向上しており、EPYCよりこちらの方が性能重視であることが窺えます。なぜEPYCブランドに位置付けなかったのかはAMDにしか分かりませんが、近年のマイニングや動画配信の潮流が原因かと考えています。
YouTuberのヒカキンがMacProで
・CPU:Xeon W(28コア)
・メモリ:1.5TB
・GPU:Radeon Pro Vega Ⅱ DUO x2
・ストレージ:4TB SSD
という意味不明なPCを組んで話題になっていましたが、動画サービスやマイニングといった並列計算や、業務レベルの処理が重視されるプログラムがそれだけ主流になってきたということなんでしょうね。
少し前なら、サーバ用と言われていたものがコンシューマ向けに変わってきているのを感じます。
また、恐らくですが、サーバー用と銘打ってしまうと売れないのでしょう。Ryzen ThreadRipperのように、あくまでコンシューマ向けの最上位と位置付けることで、消費者は「なるほど買おう!」ってなるのではないかと思います。
まあぶっちゃけ、普通の消費者に違いは分かりませんからね。
カテゴリー7のLANケーブルみたいなものです。
巷でよく言われていますが、最近のGPUにも同じことが言えます。この話も今度まとめて書きたいと思います。