【電源】誤家庭のサーバ電源/電力について

概要

拙宅では単相二線式で 100 V, 20 Aで電気の契約をしていた。電子レンジを入れた瞬間にブレーカが落ちるなど、明らかに 2000 VAでは契約電力量が不足していたため、これを機に電源周りをすべて見直した。

ポイントは以下2点。

A. 電力(電力会社→自宅)
B. 宅内配線

最近はウクライナ侵攻の関係で全国的に電力不足が取り沙汰されている様子だが、2022年4月現在、北海道には電力不足の影もない。さすが試されし大地。もう雪かきは嫌だ

図1.北電の株価。東京電力と見比べると非常に安定している。
図2.東電の株価。参考まで。東電は個人的には応援しているが株価は不安定である。



A. 契約電力量の変更

まずは契約電力量を見直した。

電気の使用量は月に 950 kWh, 金額で大体 30,000 円 を超えた。大量に電気を消費するから、どの電力会社と契約するかは非常に重要。拙宅は旧電力の北海道電力から、新電力であるLooopでんきに乗り換えた。

小売電力事業者の変更手続き

我々がする作業はLooopでんきに電話するだけである。北海道電力の解約もLooopでんき側で済ませてくれる。

乗換後の電気料金は図3の通りで、33,000 円 前後へ値下がりした。これでも旧電力の時より 4,000 円 以上安い。

図3.3月及び4月の電気料金



契約電気量の変更

契約電気量を20Aから30Aに変更する作業を行う。

まずは家庭にある分電盤を確認し、契約電力量を変更できるか(いわゆる電流制限器「親ブレーカ」を取り外せるか)を見極める。

図4.分電盤(カバー有)

蓋を開けた状態が 図5 。左方の装置が電流制限器、右方の装置が配線用遮断器。

図5.分電盤(カバーを開けたところ)

赤枠のところに漏電ブレーカが無い。この状態では電流制限器の取り外しが出来ないため、契約電気量を30Aに変更することはできない。電気屋さんに連絡して漏電遮断器を取り付けてもらった。

漏電ブレーカにも2種類存在する。図6に示すように、
・漏電保護+過電流遮断機能付きの主幹ブレーカ(赤ボタン)
・漏電保護だけの主幹ブレーカ(緑ボタン)
だ。契約電気量の変更作業を実施可能な状態は前者が取り付けられた分電盤である。

図6.漏電保護、過電流遮断(北電ネットワーク資料より)


補足:単相2線・単相3線・三相3線

多くの場合、1回路に流せる電流は、20 A以下で設計されている。大抵の一般家庭で採用している「単相2線式」という方法では 100 Vの電圧が使われているから、1回路に流せる電気量は 2000 VAとなる。

1回路に2000VAより多い電気を流したい場合、単相3線式という方法が多く取られる。単相3線式で用いられる電圧は 200 Vのため、同じ 20 Aの電流でも流せる電気量は 4000 VAで、先の方式の 2倍になる。

図にすると、図7のようになる。3本線が採用されているのが単相3線、そのうち2本の線だけを使うのが単相2線である。隣り合う2本の線の電位差は 100 Vである。3線の場合、GNDから見て2本離れた線との間には 200 Vの電位差があることになる。

単相3線式と単相2線式の違い|一般の方向け|東京電力パワーグリッド株式会社
図7.3線(東電HPより引用)

一般に 200 Vの電気をそのまま使うことは出来ない。そのため、家庭では上側2本と下側2本を分けて使う。この場合、やはり各回路に流せる電気量は 2000 VAだが、両方合わせて 4000 VAまで使うことが出来る。最近は200Vで駆動する家電が増えてきたことから、最初から単3を引いている家庭もある。

ちなみに、単相3線のほか、三相3線というタイプもある。これは分かりやすく言うと、コンプレッサーやポンプ(中身は大体三相モーター)を家庭で使う場合の選択肢だ。交流電源の位相のずれによって、電圧差を常にそれぞれ 200 Vに保っている(図8)。

図8.三相三線(個人ブログから引用)

三相は、単相に比べて、より多くのエネルギーを伝えることができる(図9)。

図9.三相三線の送電時のエネルギー(加美電子工業HPより引用)

実は、単相200Vよりも三相200Vの方が電力単価は安い。単相200Vのコンプレッサーは、三相200Vの回路で使用できることもあまり知られていない。3本中任意の2本に負荷を接続すれば正常に動作する。アース線は別途確認して繋げばよい。


工事

さて、話は戻るが、工事は以下の手順で行った。

① 電気屋さんに頼んで、漏電ブレーカを付けてもらう
② Looopでんきに依頼し、電流制限器を外す

全工事を終え、分電盤は図10のようになった。分電盤のカバー自体が大きくなったほか、左の電流制限器が内部で接合されたほか、中央の漏電ブレーカが交換された。ついでに回路も増設した。

図10.工事後の分電盤


B. 宅内配線の見直し

まず、一般家庭用のタコ足を使うと配線が終わる。図11のように、何がどこに行ったか分からなくなる。そして大抵の場合、タコ足を重ねることになる。

図11.ぐちゃぐちゃの配線

電源タップのカスケード接続は非常に危険らしい。トラッキングのリスクがあるほか、プラグが地面に近い位置にあると漏水時の漏電リスクが高くなる、と3倍速で視聴した大学の安全講習ビデオに書いてあった。

ちなみに、電源タップは劣化するという事実がある。電源タップの多重接続は劣化した電源タップの交換を難しくするので、保守面を考えてもやめた方がいい。

ちょっと前まで「電源タップなんてテキトーでええやろ」と思っていたのだが、今回一番古い電源タップ(図12)を交換しようと思って触ったら火傷した。世間で言われることにはそれなりに理由があるのだと思った。

図12.一番古い電源タップ

これを機に電源タップも買い替えた。業務用電源タップ(SANWA 19インチサーバーラック用コンセント 15A 18個口)を購入した(図13)。使い勝手が良かったので、12個口の電源タップは職場も置いた。今だと、サンワサプライのマグネット付サーバラック用コンセントも良いかもしれない。

図13.業務用電源タップ

回路に流れる電気の、電圧・電流をリアルタイムで計測したかったので、Weiduka AC8.8 パワーフィルタを2台買って、電源タップのプラグをこれに1台ずつ繋いで使うことにした(図14)。

図14.パワーフィルタ

通常のワットチェッカーとは異なり、電圧と電流が別個に表示されるのが地味に便利。レビューにもある通り、電力を測れるのは回路Aの5口までだが、普通は5口も使うことはないので問題はない。

ちなみに図14のパワーフィルタは海外製なので別途電源コードが必要で、家庭のコンセントが2ピンの場合は3ピン→2ピンの変換器も必要となる。

電圧と電流を分けず、単に電力を測りたい場合は数千円のワットチェッカーで十分。

配線整理

カオスだったタコ足配線を片付けた(図15)。

図15.配線を片付けたところ

電源タップはサーバラック用のものを百均のラックに固定して使うことにした。線名札も付けて、コンセントの行先を分かりやすく表示する工夫をした(図16)。

図16.線名札を取り付けた

取外した電源タップは全部で7本あった(図17)。あとで数えたら30本近くプラグが刺さっていた。本当にそんなに必要なのだろうか。

図17.取外した電源タップ

一先ずこれで、自宅サーバの電力周りが整ったことになる。次回はインターネット編(【回線】NEC+CiscoルータでHomeNOCに接続する)。


おまけ

これまでのコンセントは2ピンだった(図18)。

図18.2ピンコンセント

最近は部屋中のあらゆるコンセントを3ピンへ変更した。「挿してすぐ使える」タイプから「ひねって接続」タイプへ変えた(図19)。

図19.3ピンコンセント

変更理由は以下の3つ。

・自宅の電源タップがすべてサーバラック用
・アースを使う機器が多い
・滑落防止機構が無いとケーブルの自重でプラグが抜ける

コンセントごとに回路を分けたことで、「エアコン用回路を増設しなくて済む」という予想外のメリットも享受した。

引掛式のコンセントも誤家庭では良く使われる様子。

抜止タイプは平刃タイプのプラグでも使える代わり、頑張って引っ張ると抜ける。一方で、引掛タイプは対応したプラグでしか使えない代わり、原理的に引っ張っても絶対に抜けない。こちらは張力を掛けて使う前提のプラグ(劇場を想定してもらうと分かりやすい)らしい。


参考

線名札の結び方|音響・映像・電気設備が好き – Amebaアーカイブ

作成者: rarafy

2013年くらいからUnityを触っているかもしれません。 特に書くこともありませんが、趣味は部屋の掃除です。

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